特集2 2010年度全国学力・学習状況調査分析

4月20日、4回目となる「全国学力調査」に全国15,701の小学校が参加しました。テストは間もなく返却される予定です。そこで、今月は、6年生が取り組んだ算数と国語の出題内容について小学校教育に長年携わってこられた先生方に、それぞれ解説いただきました。

 

算数編 国語編

 

算数は、数式と言葉の両方を用いて考え方を説明することが大切

 

金山憲正先生

近畿大学附属小学校 副校長

近畿大学算数教育研究会 会長

金山憲正先生

 

Profile

大阪教育大学卒業。

大阪市内の小学校校長を経て、現在に至る。

前大阪市小学校教育研究会算数部長。

『見通しをもち、筋道を立てて考える算数科の指導』(明治図書)、

『新しい算数研究』(東洋館出版社)ほか著作多数。

 

 

新しい問題を解決しその考え方を表現する

■2010年度4月20日に実施された学力調査をご覧になられて、どう思われましたか。

 

 大前提としてですが、平成20年に改定された新しい学習指導要領の答申で、算数にとって、思考力、判断力、表現力が大切であるということが確認されています。しかしこれは、言葉でいくら言ったところで、実際に浸透させていくのは、とても難しいのです。

 そこで、学校や教師、保護者などに対する刺激剤のひとつとして、全国学力調査が意味を持ってきました。

 そもそも、算数の勉強というとドリルなどで反復練習をし、速さと正答率を上げる、というイメージでとられがちです。しかし、実はここに落とし穴があります。算数に本当に必要なのは、じっくりと考えて、自分の言葉で表現する(話す・書く)力です。その力があって初めて、自分の考えをまとめることができ、問題を解決できるようになるからです。

 例えばB問題の設問5の(2)(左囲み)、割引率のいい商品を選び、その理由を説明する問題です。これは数式だけでは答えられません。問題文を正確に理解し、言葉を含めて考え方を説明し、理由付けをした上で答えを導く。前回に引き続き、今回の学力調査でも、問われていたのはこの力でした。

 

学力テスト 算数 B問題

 

■考え、表現する能力を養う授業の必要性が高まっているのですね。

 昨今、授業を変えていこうという方針のもと、様々な授業研究が各所で、進められています。従来は、模範的な解法を教師が説明し、その解説を詰め込んでいくというパターンでした。しかしこれでは、公式を覚えるだけの勉強であって、新しい問題を自分の力で解決していく力がつきません。つまり、これからの授業は、もっと問題解決型でなくてはいけないのです。

 問題解決型の授業が主流になるにあたり、問われてくるのは、教師の力量です。残念ながら、多様な考え方に対処しきれない教師が多いですね。

 例えば小数の計算において、小数第一位の計算でしくみをしっかり指導していれば、小数第二位以下や分数の計算ではそのことを発展させて計算の仕方を見つけていくことができるのです。しかし、そのねらいを十分に理解しないで指導にあたっている姿に出会うことがあります。それでは身についている知識を新しい形に活かすという活用力を育てることができないのですね。しかし、知識は活用することでより身につくのですから、その活用力を磨く授業をするべきなのです。

 ですから当校の授業では、解答のパターンを教えるのでなく、クラスで話し合いながら、完成した答えを上げるようにしています。そうすると、人の意見も聞けるようになりますし、自分の考えも、思いつきでただ話すのではなく、周囲にわかってもらえるように、メモを取り、まとめてから話すようになります。

 算数の学習後には、その日の学習内容の「振り返り」をノートにまとめさせます。そして、上手にまとまっているノートは教室で掲示し、他の子どものヒントになるようにします。最初は何事も模倣で始まりますから、これは、なかなか効果があるのです。

 また、ノートに間違ったことを書いては駄目だという感覚に縛られて、思うように「書く」ことができない子どももいます。私は、そんな子どもには、「『たぶん』、と頭につけて書きなさい」と言っています。『たぶん』だから間違っていてもいいんですよ(笑)。そうすると、ノートに自分の思いを書きやすくなります。

 まず、書いてみることが大切ですから、それで最初の一歩はOK。あとは積み重ねで成長していきます。

 普段からこういう学び方をしていれば、今回の学力調査で難解といわれるB問題にも、対処できるようになると、私は思いますね。

 

子どもの発想力を信じつつ根気よく表現力を育てる

■家庭学習の中で、できることや気をつけることはありますか。

 それは、お子さまの発想を、じっくりと待ってあげてほしいということです。

 時に、子どもたちから、大人の固定された予想を超えた、素晴らしい発想が出てくることがあります。しかし、考え方のプロセスの違いで、子どもが理解していないように思え、苛立ちを感じることもあるかもしれません。しかし、それではせっかくのお子さまの伸びしろを無視してしまうことになります。まずはじっくりと待ってください。その子なりの考え方が出てきたら、それを褒めてあげてください。内容がもしも不十分なら、「ここが少しわかりづらいよ」と教えてあげてください。そして、良くなればまた、その努力を褒めてほしい。そうすることで、子どもの問題解決能力は、飛躍的に伸びます。きっと、算数が好きなお子さまに育ってくれると思いますよ。

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