2010年度全国学力・学習状況調査分析

4月20日、4回目となる「全国学力調査」に全国15,701の小学校が参加しました。テストは間もなく返却される予定です。そこで、今月は、6年生が取り組んだ算数と国語の出題内容について小学校教育に長年携わってこられた先生方に、それぞれ解説いただきました。

 

算数編 国語編

 

自分の考えを表現できる国語力を身につけることが必要です

 

どりむ社教育文化研究所所長

松 美佐子先生

 

Profile

大阪学芸大学(現・大阪教育大学)卒業。

小学校教師や校長、大阪府公立小中学校女性校長会会長などを務めた。

その後、大阪市教育センター教育相談室相談員を経て、現在に至る。

研究分野は生活学習指導で、

教育文化に関するさまざまな研究や事業に取り組んでいる。

松 美佐子先生

 

 

自分の考えを言葉にし、文章で表現する力を測る

■2010年度4月20日に実施された学力調査をご覧になられて、どう思われましたか。

 

 まず、問題文に大きな特徴があったと思います。読み取り方の難しい文章、視点が複数ある文章が題材に選ばれていたからです。

 例えば、B問題の設問2「つりずきの宇宙人」は、「読者の立場」から見るのと、「主人公の立場」から見るのとでは、見えているものが違う、という物語です。読者には、宇宙人が釣っているのがこいのぼりだったとわかっているけれど、主人公の宇宙人はわかっていない。その面白さを子どもたちに考えさせようという内容でした。

 また、設問4(左囲み)も子どもたちには難しかったと思います。思ったこと、考えたことを、条件に合わせて書く―単純に、思ったことを書くのではなく―、なぜ自分はそう思ったのかという「理由」を書かなくてはいけない。さらに、「~だから」などの「表現」を正しく使わなければいけない。このように、複数の要素を満たして説明・解答しなければならない問題が目立ちました。

 

学力テスト 国語 B問題

 

 

普段の学校・家庭学習から説明する力を身につける

■学校や家庭での、普段からの学習で、説明する力は身につくでしょうか。

 考えたことを形にし、文章にすることへの対策としては、日記をつけるといいと思います。学校では、実状として、日記への指導はあまり行われていません。もちろん、書くことからスタートですから、書くだけでも意味がないわけではありませんが、書いてきたものに対して添削や指導をされることがないのは残念です。

 だから、もしも日記の宿題などをご家庭で見てあげることができるなら、題材の見つけ方、ヒントとして、おうちの方がテーマを出してもいいでしょう。「何か書きなさい」と言われても、子どもは困ってしまいますから。例えば「その日2番目に印象に残ったこと」「けんかをしたこと」「給食のメニューについて」などというように。視点をちょっと絞ってあげるのです。そうすれば、グンと書きやすくなります。

 加えて、ただの事実の羅列ではなく、事実に加えて感想や意見が書かれているかどうかをチェックしてあげると、よりいいですね。自分が書いた文章に事実と感想が混ざってわからなくなってしまう子も多いです。読書感想文でもそうですね。あらすじと自分の感想が一緒になってしまう。「感動した部分」を示し「自分の思い」を書く。そして「なぜ、そう思ったのか」理由も書けるように気を配ってあげれば、面白い独自の感想文が書けるようになると思います。

 B問題の設問4で試されているのも、そういった問題です。情報を見比べれば、どの時計を買うべきかは、おそらくはすぐにわかるはずです。でもこの問題でも大切なのは、「決めた理由を書くこと」です。相手にわかってもらうためには「~だから」という理由をきちんと書かなければいけない。昨年の算数の問題でも、そういう形で解答させるものがありましたね。きちんと表現する力は、教科を問わず求められているのです。

 

■家庭で普段から心がけるべきことはどんなことでしょうか。

 まずは、「書くこと」への抵抗をなくすことでしょうね。

 書くことが難しければ、低学年の子どもならば、口頭作文でもかまいません。質問し、その答えを褒めてあげれば、子どもは喜びます。お子さんの答えをおうちの方が書き留めて目に見える形にしてあげるのもひとつの方法かもしれません。

 中学年になれば、物事を抽象化して考えられるようになります。抽象化というのは、目に見えないことを考えることです。「まるで○○のよう」という例えや小数点以下の世界、相手の心の動きを推察すること、生や死などについても考えられるようになります。だから、読書後、登場人物に手紙を書く、というのもいいでしょう。

 5、6年生の高学年になれば、もう大人です。自分の考えを文章にする実践も可能です。わからない言葉は辞書を引いて調べる、ということもさせてください。

 「考えを表現する」という場面は、今後ますます増えてくるでしょう。ですが、考えを言葉で表現できる人は、まだ多くないです。「考えること」の訓練そのものができていないのではないでしょうか。「書くこと」は「考えること」です。今回の学力調査も、これらが「まだまだ不十分だ」ということに気付き、改善の方向を見出し、目指す良いきっかけになってくれればと思っています。

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